仕組み · 7 分
VPNをオンにするとプロバイダーには何が見えるのか——隠れるもの、隠れないもの(2026年)
VPN経由で開いたサイトはプロバイダーに見えるのか。答えは「見えない」。ただしVPNを使っていること、サーバーのアドレス、時間帯、通信量は見えます。隠れるもの、見え続けるもの、トンネルの外に漏れる経路、自分の接続の確かめ方を順に説明します。
更新: 2026-10-19
結論から言うと、VPNの中を流れるものはプロバイダーには読めません。ただし、VPNがあること、どのアドレスにつながっているか、いつ使っていたか、どれだけの量が流れたかは見えます。携帯キャリアやカフェのWi-Fiの管理者も同じです。VPNは見えるものを大きく減らしますが、ゼロにはしません。誤解のほとんどは、この差から生まれます。
| 項目 | VPNなし | VPNあり |
|---|---|---|
| 開いているサイト | 見える(アドレス、DNS、SNI) | 見えない |
| ページの中身 | HTTPSなら見えない | 見えない |
| VPNを使っていること | — | たいてい見える |
| VPNサーバーのアドレス | — | 見える |
| 接続している時間帯と通信量 | 見える | 見える |
| VPNの外を通る通信 | 見える | 見える(DNS、IPv6、除外設定) |
VPNなしで見えるもの
トンネルがなければ、プロバイダーはすべてのパケットの通り道にいます。接続先サーバーのアドレスと時刻、プロバイダーのDNSで名前を引いていればそのDNS問い合わせ、そしてほぼすべてのHTTPS接続の冒頭にあるサイト名(SNI)が見えます。SNIはDNSを暗号化していても見えます。Encrypted Client Helloがこれを変えつつありますが、まだどこでも使えるわけではありません。HTTPSのサイトのページやフォーム、メッセージの中身は見えません。
VPNを使っても見えるもの:サーバー、時間、量
VPNを使うと、すべてのパケットは1台のサーバーに向かいます。長い接続先のリストが、1本の流れになるわけです。ただし、そのサーバーのアドレスは見えたままで、そこから分かることもあります。データセンターのネットワークは、家庭や携帯の回線とは様子が違います。自宅の回線からデータセンターの1台へ長時間つながっている、というだけで見分けのつく形になります。
暗号化が守るのは中身で、封筒ではありません。接続の開始と終了、各方向のバイト数、どんな波で送られたかは、引き続きプロバイダーに見えます。双方向に一定の流れが30分続けば通話らしく、一方向に数GBなら大きなダウンロードらしく見えます。どのサイトを開いたかは分かりませんが、生活のリズムは分かります。正直に言えば、VPNが隠すのは中を通るものであって、VPNを使っているという事実ではありません。
トンネル自身のハンドシェイク
開いたサイトのハンドシェイクはトンネルの中を通ります。しかしトンネル自身のハンドシェイクは外側にあり、そこで何が読めるかはプロトコルによって違います。
- VLESS Reality:実在する第三者のサイトに向けたハンドシェイクで、そのサイトの名前を載せます。記録されるような自分のドメインはありません。弱点は別のところにあり、接続先のアドレスとその名前の持ち主が一致しないため、照らし合わせることはできます。
- Hysteria2などQUICを使うプロトコル:最初のQUICパケットは、RFC 9001で公開されている値から作る鍵で保護されています。経路上の誰でも復号して名前を読めます。QUICだけでは名前は隠れません。
- 自前ドメインで普通のTLSを使うVLESSやTrojan:ハンドシェイクにそのドメインが平文で載り、通信に付いたままのラベルになります。
- WireGuard:TLSがないので名前もありません。それでも見えないわけではなく、ハンドシェイクは先頭バイトが決まった148バイトと92バイトのメッセージなので、長さを見る簡単なルールで見分けられます。
トンネルの外に漏れる経路
- トンネル外のDNS:クライアントが名前解決を引き受けないと、問い合わせはプロバイダーのDNSへ行きます。これはVPNが隠すはずだったサイトのリストそのものです。
- IPv6:トンネルがIPv4しか運ばず、回線にIPv6があると、IPv6対応のサイトには直接つながります。IPoE環境でのふるまいはIPoE(v6プラス・transix)環境でVPNはどう動くのかで説明しています。
- 除外設定:VPNの外に出すよう設定したサイトやアプリは、VPNなしと同じように見えます。
- 起動時と再接続時:トンネルが立ち上がるまでの間(起動時とネットワークが切り替わるたび)、通信は普段の経路を通ります。切断時の遮断機能がなければ、この数秒は見えます。
当社アプリの扱い
- 現在地:「Where are you?」の画面に2つのモードがあります。「I am abroad」では、ロシアのサイトも含めてすべての通信が当社を通ります。「I am in Russia」ではロシアのサイトが直接開き、プロバイダーにはVPNなしと同じように見えます。ロシア国外なら「I am abroad」を選んでください。アプリの表示は今のところ英語とロシア語のみです。
- iPhoneとiPadのDNS:サイト名はCloudflareがDNS-over-HTTPSで、VPNサーバー経由で解決します。直接開くサイトの名前は、VPNの外でYandexの公開DNSが解決します。
- パソコンのDNS:サイト名はCloudflareとGoogleが解決し、問い合わせはVPNサーバーを経由します。IPv6もIPv4と一緒にトンネルに入れます。
- サーバーのアドレスは、接続する前にお使いのネットワークのDNSで調べます。そうしないと接続先がないためです。この1回の問い合わせはプロバイダーに見えます。
- 切断時:iPhoneとiPadには「Block the internet if the VPN drops」のスイッチがあり、VPNがオンの間はその外を何も通しません。
見る人は消えず、場所を移るだけ
プロバイダーに見えなくなったものは、別の誰かに見えるようになります。通信はVPNサーバーからインターネットに出るので、その運営者が以前プロバイダーのいた位置に立ちます。だから「プロバイダーに何が見えるか」は、いつも「VPNサービスに何が見えるか」とセットで考えるべきです。
プロバイダーが何を保存するかは、法律と事業者の方針で決まります。日本では電気通信事業法が通信の秘密を定めていますが、どの記録をどれだけの期間残すかは事業者ごとに異なります。VPNを使えば、その記録に残るのはVPNサーバーへの接続であり、見たサイトではありません。
自分の接続を確かめる手順
- 1VPNをオンにして当社の漏れチェックを開きます。サイトから見えるアドレスと国、WebRTCの漏れ、タイムゾーンが分かります。DNSはまだ調べられません。
- 2パソコンでIPv6を
curl -6 https://ifconfig.coで確かめます。自宅のアドレスが返ればIPv6がトンネルの外を通っています。接続エラーならIPv6自体がないということで、これも問題ありません。 - 3再接続を確かめます。Wi-Fiをオフにしてまたオンにし、すぐにチェックを開き直します。切断時の遮断が効いているかは、この数秒で分かります。
- 4確認は毎週ではなく、クライアントを替えたとき、OSを更新したとき、回線を替えたときに行います。
よくある質問
VPNを使うと、どのサイトを見たかプロバイダーに分かりますか?
トンネルの外を何も通らなければ分かりません。アドレスもサイト名もページも、暗号化された流れの中を通ります。それでも名前が見えるなら、原因はたいていトンネル外のDNSやIPv6、除外設定で、プロトコルではありません。
VPNを使っていること自体はプロバイダーに分かりますか?
たいてい分かります。ハンドシェイクが普通のHTTPSに似ていても、データセンターの1つのアドレスへの長く太い接続は目立ちます。分かるのはVPNがあることで、中身ではありません。
VPNの使用中、プロバイダーは何を記録しますか?
VPNサーバーのアドレスとポート、接続の開始と終了の時刻、各方向の通信量、パケットの大きさと間隔、TLSがある場合はトンネルのハンドシェイクに載る名前です。保存期間は国と事業者によって違います。
他人のWi-Fiでは、VPNは役に立ちますか?
役に立ちます。ネットワークの管理者に見えるのはプロバイダーと同じ限られた情報で、トンネル内の通信を読むことも書き換えることもできません。ただし自分で開いたフィッシングページからは守れません。
役に立ちましたか?
回答によって何かが変わることはなく、社内でしか見えません。